肉をビールに漬ける理由は? 炭酸水やコーラ煮の効果について

肉をビールに漬ける理由は?

肉は、ビール・コーラ・炭酸水などにより柔らかくなります。

これは、肉には酸性pHに傾けられることにより「保水性が向上する」「タンパク質が分解される(肉の熟成が進む)」などの特徴があるためです。水素イオン指数(pH)の低い食材は、肉料理の下ごしらえに重宝されます。

また、酸性pHにはコラーゲンを膨潤させる作用もありますので、煮込み料理(スジ肉など)の下ごしらえにも効果的です。

酸性pHが保水性を高める理由は?

酸性pHが保水性を高める理由は?

酸性pHには、肉の保水力を向上させる効果があります。

これは、肉を構成するタンパク質(筋原線維タンパク質)には「水素イオン指数pHが傾くことにより繊維が緩んで保水力が高まる」という特徴があるためです。そのため、酸性やアルカリ性の調味料を利用することがあります。

たとえば、マリネ(酢)は酸性ですし重曹(炭酸水素ナトリウム)はアルカリ性です。

肉の保水力は、酸性pHとアルカリ性pHのどちらに傾けても向上します。しかし、他の調味料との相性や(次項で紹介する)タンパク質を分解する効果が酸性側でしか得られないことから、酸性側に傾けるのがセオリーになっています。

ブライニング(ブライン液)に浸すのも、基本的には同様の理由からです。

酸性pHがタンパク質を分解する仕組みは?

酸性pHがタンパク質を分解する仕組みは?

酸性pHは、タンパク質を分解します。

これは、酸性側に傾けられることにより肉に含まれている酵素(酸性プロテアーゼ)が活性化されて筋原線維タンパク質の分解(自己分解=熟成)が促進されるためです。これにより、肉が柔らかくなってうま味も増します。

また、コラーゲン(結合組織)が膨潤してゼラチン化しやすくもなります。

肉を構成するタンパク質には、筋原線維タンパク質(筋繊維)・肉基質タンパク質(結合組織)・筋形質タンパク質(色素タンパク質など)の3種類がありますが、酸性pHは筋繊維と結合組織に作用することにより肉を柔らかくしています。

ビールやコーラの効果は、味(苦味や甘味など)だけではありません。

糖がタンパク質の熱変性を遅らせる?

糖がタンパク質の熱変性を遅らせる?

ショ糖は、タンパク質の熱変性を遅らせます。

肉はタンパク質の熱変性により固くなります。しかし、ショ糖には「タンパク質との水素結合により熱変性を遅延させる」という効果がありますので、ショ糖(砂糖)を加えられた肉は過熱しても固くなりにくくなります。

甘い玉子焼きが(だしを加えなくても)固くなりにくいのは、砂糖がタンパク質の熱変性を遅らせているためです。

そのため、ビールやコーラ漬けにされた肉は固くなりにくくなりますし、マリナード(マリネ液に浸す調理技術)やブライニング(塩水に浸す調理技術)の際には砂糖を加えるレシピが多くなっています。

ビールは、肉料理の調味料としても優秀です。

【まとめ】肉をビールに漬ける理由は?

肉を柔らかくするには、いくつかの方法があります。たとえば、酸性pHに傾けると「保水力が高まる」「酸性プロテアーゼが活性化する(熟成が進む)」ことにより柔らかくなりますし、砂糖を加えると「多数のOH基を持つショ糖がタンパク質と水素結合する」ために熱変性が遅延して固くなりにくくなります。ビールとコーラは酸性pHとショ糖、炭酸水は酸性pHにより肉料理が柔らかくなることになります。

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