肉は、重曹で柔らかくなります。
肉には、酸性やアルカリ性に傾くことで”保水性が向上する”という性質があります。これは、電荷の反発によって筋原線維タンパク質が緩むためであり、緩んだ部分に水分が入り込むために柔らかくジューシーになります。
そのため、肉を柔らかくするためには「ビールやコーラに浸ける(酸性に傾ける)」「重曹水に浸ける(アルカリ性に傾ける)」などの方法がとられることがあります。
重曹を加えるメリットは?

重曹は、肉を柔らかくします。
肉が柔らかくなるのは、筋原線維タンパク質が緩むことにより保水性が高くなるためです。重曹はpH8.5前後の弱アルカリ性であり、アルカリ由来のプラスイオンまたはマイナスイオン同士の反発が起こるために筋原線維タンパク質が緩みます。
その緩んだ隙間に水分が保持されるというわけです。
同様の効果は、酸性に傾けても得られます。たとえば、肉を柔らかくするためにマリネする(酢やレモン汁などの漬け汁に浸す)ことがあるのは、筋原線維タンパク質を緩めることと酸性プロテアーゼを活性化させるためです。
酸性に傾けたくない場合には重曹が用いられます。
重曹を加えるデメリットは?

重曹には、2つのデメリットがあります。
それが、「①重曹特有の臭いや苦味が残ることがある」「②フラボノイド(ポリフェノール)と反応すると黄色く変色する」ことです。「重曹によりビタミンB1が損失する」という情報もありますが、はっきりしたことは分かっていません。
このことからも、まずは2つのデメリットに注目していきます。
デメリット | 仕組み |
---|---|
臭いや苦味 | 重曹が残る |
変色 | フラボノイドと反応する メイラード反応が促される |
重曹とは、炭酸水素ナトリウム(Na2CO3)です。
重曹には“加熱”と“酸”に反応して二酸化炭素(炭酸ガス)を放出する働きがありますので、多くの料理には“膨張剤”として利用されています。しかし、反応しきれずに残ってしまうと、重曹特有の臭いや苦味が生じることになります。
お惣菜店の唐揚げなどに、どら焼きなどにある特有の風味を感じたことのある方は少なくないはずです。それこそが重曹特有の風味です。
また、重曹を使った料理は色が濃くなります。これは、重曹には「フラボノイド(ポリフェノール)と反応して黄色く変色する」「アミノカルボニル反応(メイラード反応)を促進させる」などの作用があるためです。
このことからも、淡い色の料理には避けられるテクニックです。
重曹による肉の軟化方法は?

肉は重曹水に浸します。
塩基性pHによる肉の軟化には”1.5~3%ほどの重曹水”が理想的だとされていますので、重曹小さじ1(約5.5g)をカップ1~1と1/4(200~250ml)の水に溶かすことでちょうどよい濃度の重曹水になります。
漬けこむ時間に正解はありません。
軽くもみ込むだけでも効果はありますし、数時間漬けておくと驚くほどに柔らかくなります。しかし、漬け込み時間が長くなるほどに肉の風味や食感(テクスチャー)が失われていきますので加減の難しさがあります。
はじめは1~2時間くらいで様子を見てみることをお勧めします。
【まとめ】重曹で肉が柔らかくなる?
重曹は、筋原線維タンパク質を緩めて保水性を高めます。たとえば、鶏肉の唐揚げなどに少量の重曹を混ぜ込んでおくことでふっくらジューシーな唐揚げになります。しかし、分量が多すぎると重曹特有の臭いや苦味が残ってしまいますので、あくまで“少量”加えることがポイントになります。