料理にとろみがつかない?

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こんにちは、めしラボ(@MeshiLab)です。

料理のとろみには片栗粉や小麦粉に含まれているでんぷんが利用されています。でんぷんはブドウ糖が結合して鎖のようにつながっている高分子物質です。でんぷんを水とともに加熱すると鎖の束の間に水分子が入り込んで水に溶けた状態になります。このような鎖の束が複数分散することでとろみがつきます。

しかしでんぷんの扱い方によってはとろみがつかないこともあります。

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今回の記事は次のような人におすすめ!

  • 片栗粉や小麦粉を加えても料理にとろみがつかない。
  • とろみはつくがすぐにシャバシャバになる。
  • 料理のとろみがつかなくなる仕組みを知りたい。

一般的に、料理のとろみはでんぷんによりつけられています。

しかし調理方法や料理の扱いによっては「とろみがつかない」「すぐにとろみがなくなってしまう」などの問題が生じてしまうこともあります。原因の多くは「でんぷんの糊化(α化)が不十分」「酵素が働いてしまっている」などになります。

仕組みが理解できていればこれらの問題は解決できます。

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でんぷんでとろみがつく仕組みは?

片栗粉や小麦粉はでんぷんの糊化によりとろみがつきます。

でんぷんはブドウ糖の分子が鎖のようにつながってできています。生のでんぷんは一定方向にかたく配列したミセルと呼ばれる状態を保持していますのでとろみはつきませんが、水のある状態で加熱されることによりミセルが緩んでとろみがつきます。

とろみには水分と熱が不可欠です。

水分子は加熱によりゆるんだでんぷん分子の隙間に入り込んでいきます。水分子の入り込んだでんぷん分子は水中で互いに絡み合うようになって運動が制限されます。この反応こそがとろみ(粘度)のつく仕組みになります。

でんぷんの糊化(α化)と呼ばれる反応です。

加熱不足ではとろみがつかない?

でんぷんの糊化には温度が必要です。

そのため十分な温度と加熱時間がなければでんぷんの糊化は不十分になります。またでんぷんには植物の種類によりでんぷん粒の特徴が異なりますので、糊化温度や最高粘度(BU)時の温度なども異なることになります。

以下は主なでんぷんの糊化温度と最高粘度です。

糊化温度(℃)最高粘度(BU)
小麦87.3104
トウモロコシ(コーンスターチ)86.2260
63.6680
ジャガイモ(片栗粉)64.51028

小麦粉はしっかり加熱する必要があります。

片栗粉の糊化温度は64.5℃であることに加えて最高粘度が高いという特徴を有しますので簡単にとろみをつけることができますが、小麦粉は糊化温度が87.3℃であることに加えて最高粘度が片栗粉の1/10ほどしかありませんのでしっかり加熱して粘度を高めます。

またブレークダウン後の粘度も考慮する必要があります。

でんぷんの加熱を続けると急に粘度が低下します。これはギリギリまで膨らんでいたでんぷん粒が破裂して包まれていたアミロペクチンが流れ出てしまったためです。この状態をブレークダウン(コシが切れる)と表現されます。

片栗粉(ジャガイモでんぷん)は比較的低い温度からとろみがつきますが、ブレークダウンが激しいために1分ほど煮立たせて表面にツヤが出てきたタイミングで火を止めます。しかし小麦粉のでんぷんは糊化温度が高いことに加えてブレークダウンがゆるやかなことからもコシが切れるまでしっかり加熱する方がメリットが大きいといえます。

でんぷんによるとろみは、原料の違いにより加熱方法が異なります。

酵素が働いているととろみがなくなる?

酵素が働くととろみがなくなります。

でんぷんはアミラーゼと呼ばれる酵素によって分解されます。アミラーゼは唾液やハチミツ、味噌(または塩麹などのように麹が含まれている調味料)などに含まれており、アミラーゼが働くことででんぷんが分解されてとろみがなくなってしまいます。

アミラーゼが働いた場合には再加熱をしてもとろみは戻りません。

注意して欲しいのは味見による唾液の混入や酵素を失活させていない調味料による仕上げの味つけです。せっかくとろみをつけた料理であっても酵素(アミラーゼ)が混入してしまうでんぷんが分解されて糖に代えられてしまうためにとろみは失われていきます。

中華丼などを食べていると後半にシャバシャバになっていくことがあるのは唾液に含まれていた酵素(アミラーゼ)によってでんぷんが糖に代えられてしまうためです。酵素は微量であっても(時間はかかりますが)でんぷんを分解していきます。

酵素(アミラーゼ)の混入には注意が必要です。

まとめ・料理にとろみがつかない?

多くの場合、料理のとろみはでんぷんの糊化(α化)によるものです。

でんぷんの糊化には十分な水分と加熱が必要ですので、でんぷん粒はあらかじめ十分に膨潤させておくこと、でんぷんの種類に応じた十分な加熱温度(小麦でんぷん87.3℃、ジャガイモでんぷん64.5℃など)を確保することなどがポイントになります。

また酵素(アミラーゼ)が混入してしまうとでんぷんが分解されてとろみが失われてしまいますので、味見での唾液の混入や仕上げの調味料には注意が必要です。