しょっぱいだけのぬか漬けは美味しくありません。
適切に漬けられたぬか漬けの塩分濃度は平均すると3~4%になります。たくさん食べれば少し塩辛い塩分濃度ではありますが、箸休めとして食べるには気になりません。しかし、熟成不足のぬか床に漬けると塩分濃度以上の塩辛さを感じるようになります。
丸みのない刺々しいしょっぱさを感じるのであれば、ぬか床の熟成不足を疑ってみる必要があります。
ぬか漬けがしょっぱく感じられる理由は?

味の感じ方は味のバランスにより変化します。
たとえば、同じ塩分濃度であっても甘味、酸味、苦味、うま味などのバランスにより、塩辛く感じられることもあれば薄く感じられることもあります。ぬか床の場合、有益な微生物が弱ることで塩辛く感じられやすくなります。
主な原因は、下記の2点です。
原因 | 仕組み |
---|---|
立ち上げて間もない | 微生物の多様性に欠ける |
気温が低い | 微生物の働きが鈍る |
ぬか漬けの味は、ぬか床に生育する微生物により変化します。
ぬか床に生育している有益な微生物(乳酸菌や酵母菌など)は20~25℃くらいの温度帯を好みます。温度が低すぎれば生育スピードが鈍りぬか漬けの漬かりが悪くなりますし、高すぎれば異常発酵により不快な臭いが生じることがあります。
立ち上げたばかりのぬか床や低温時のぬか床は、しょっぱいだけのぬか漬けになりやすい傾向にあります。
酸味が足りないとしょっぱくなる?

酸味は、塩味の感じ方に影響を与えます。
たとえば、塩辛い食べ物にレモンをしっかりと絞れば塩味は和らぎますが、隠し味程度に絞ると塩味が引き立つことになります。前者の場合は“味の抑制効果”であり、後者の場合は“味の対比効果”として作用しているということになります。
熟成不足のぬか床は、乳酸菌の働きが十分ではありません。
ぬか床は、熟成が進むことで水素イオン指数がpH4.5程度になります。このくらいの酸度があれば腐敗菌を寄せ付けにくくなりますし、何よりも食欲をそそる爽やかな酸味が加わることになります。
塩味を強く感じるのであれば、熟成不足である可能性が高いと言えます。
香味が足りないと刺々しくなる?

香味が足りなければ、ぬか漬けは刺々しい味になります。
ぬか床は、多種多様な微生物の働きによってバランスが保たれています。たとえば、乳酸菌は乳酸を生成する微生物、酪酸菌は酪酸を生成する微生物、酵母菌はアルコールと二酸化炭素を生成する微生物です。
おいしいぬか漬けには、味の複雑さが必要です。
乳酸菌が優位であれば酸っぱいぬか漬け、酪酸菌が優位であれば臭いぬか漬け、酵母菌が優位であればアルコール臭いぬか漬けになります。しかし、バランスの良いぬか床では有機酸とアルコールのエステル化などにより芳醇な香りが生まれたりもします。
そのようなぬか床では、塩味にも丸みが生まれることになります。
塩分濃度を下げない理由は?

むやみに塩分濃度を下げてはいけません。
ぬか床は、塩分濃度と酸性度によって腐敗菌の侵入を防いでいます。6~8%の塩分濃度とpH4.5程度の酸性度が保たれているからこそ腐らないのであって、塩分濃度を下げ過ぎると耐塩性を持たない腐敗菌が増えやすくなります。
多くの場合、しょっぱいぬか漬けの原因は熟成不足です。
ぬか床の熟成不足の場合、塩分濃度を下げたとしても “米ぬか風味のおいしくない漬物”になってしまうだけです。おいしくないだけならまだしも、塩分濃度を下げることにより腐敗してしまうリスクが高くなります。
まずは、常温であっても1~3ヶ月くらいは管理してみてください。
しょっぱいぬか漬けの塩抜き方法は?

漬かり過ぎたぬか漬けは、塩抜きできます。
塩抜きとは、読んで字のごとく塩を抜くことです。漬かり過ぎた漬物は、塩分濃度1.5~3%前後の食塩水に浸けておくことで塩抜きできます。真水では表面の塩分だけが抜けやすくなりますので注意が必要です。
また、精製塩ではなく粗塩を使います。
精製塩と粗塩の違いは、“にがり”の有無です。にがりとは精製度の低い食塩に含まれている塩化マグネシウムや塩化カルシウムのことですが、この“にがり“が含まれていることによって漬物の食感が保たれやすくなります。
歯触りの良いぬか漬けにするためには、粗塩であることがポイントになります。
【まとめ】ぬか漬けがしょっぱい?
ぬか漬けの塩辛さは、ぬか床の熟成度に左右されます。これには、味の相互作用が関わっています。一例として、「酸味の足りないぬか床では対比効果によって塩味を強く感じられるようになる」「十分に酸味のあるぬか床では抑制効果により塩味を感じにくくなる」などが挙げられます。