ゆで卵は、卵黄の表面が変色することがあります。
これは卵黄の表面に硫化第一鉄(FeS)が生成されるためであり、硫化第一鉄によって緑黒色化します。緑黒色化を防ぐためには、「鮮度の良い卵を使う」「加熱後は急冷する」「必要以上に茹ですぎない」などの対策が取られます。
硫化第一鉄に害はありませんが、硫黄臭の原因になるため好まれません。
卵黄表面が変色する仕組みは?

緑黒色化の正体は、硫化第一鉄です。
卵の卵白には硫黄を含むアミノ酸が含まれています。卵が加熱されると、硫黄を含むアミノ酸が分解されることによって硫化水素が発生し、硫化水素と卵黄に含まれている鉄分が結びつくことによって硫化第一鉄となります。
以下のような工程を経て変色していきます。
- 卵白が加熱されて硫化水素が発生する。
- 硫化水素と卵黄の鉄分が反応する。
- 硫化第一鉄となり黒緑色に変色する。
そのため、卵黄の表面だけが緑黒色に変色します。
食べても害はありませんが、硫黄臭くなります。卵白のタンパク質中のジスルフィド結合(S-S結合)が還元されると硫化水素(H2S)が発生しますが、硫化水素臭は俗に“硫黄臭い”と言われている臭いです。
変色自体に問題はなくても、臭いが問題になるケースが多くなります。
変色しやすくなる条件とは?

ゆで卵の変色は、加熱時間と鮮度に影響を受けます。
たとえば、長時間の加熱や加熱後に急冷しない場合には「圧力により硫化水素と鉄が結合しやすくなる」ために変色しやすくなりますし、卵の鮮度が落ちていると「卵白のpHが高くなって硫化水素の発生量が増える」ために変色しやすくなります。
以下のような仕組みです。
変色原因 | 仕組み |
---|---|
加熱時間 | 硫化水素と鉄が結合しやすくなる |
卵の鮮度 | 硫化水素の発生量が増える |
ゆで卵は、上記2点を意識することで変色しにくくなります。
しかし、卵の鮮度が良すぎると殻が剥きにくくなります。これは、鮮度の高い卵白には二酸化炭素(CO2)が豊富に含まれているためであり、加熱により卵白中の二酸化炭素が膨張すると卵白が内卵殻膜に強く押し付けられてしまうためです。
ゆで卵の卵の鮮度は、“高すぎず低すぎない“ことがポイントになります。
変色させないためには?

卵黄の変色を防ぐためには、3つのポイントがあります。
それが、「古い卵を使わないこと」「必要以上に加熱しないこと」「茹でた後はすみやかに冷水で冷やすこと」の3点です。冷水にとるのは、内圧が下がることにより「硫化水素と鉄分との結びつきを弱められる」ことができるためです。
しかし、ゆで卵特有の難しさもあります。
ゆで卵は、卵が新鮮であるほどに殻を剥きにくくなります。卵黄の変色を恐れるばかりに卵白をボロボロにしてしまっては意味がありませんので、殻を剥きやすくなおかつ固ゆで卵にしても卵黄の変色を起こさせないことがポイントになります。
【まとめ】ゆで卵の変色原因は?
ゆで卵の卵黄は、黒緑色に変色してしまうことがあります。卵黄の変色は「硫化水素と卵黄の鉄分が反応して硫化第一鉄が生じることによるもの」ですので、硫化水素の発生量を抑えることと反応時間を短くすることが変色させないポイントになります。とはいっても、常識的な量であれば食べても害になることはありませんので、気にしなくても大丈夫です。