燻製は有機酸により酸っぱくなります。
燻製の煙(燻煙)には様々な成分が含まれています。その中には有機酸(酸性を示す有機化合物)も含まれており、ギ酸や酢酸などの分子量の小さい有機酸は水に溶けやすいために燻製を酸っぱくしてしまうことがあります。
燻製を酸っぱくしないためには乾燥や熟成の工程をていねいに行うことと(燻製器によっては)燻煙の途中で水分をふき取ることがポイントになります。
燻煙の成分と効果は?

燻煙には様々な効果があります。
燻製が保存食であるのは、塩漬けや乾燥による塩分濃度の上昇や脱水の他、燻煙による殺菌・抗菌効果があります。これらの作用によって「保存性が高まることに加えて味が良くなる」ことになります。
以下は主な燻煙の成分と効果です。
成分 | 効果 |
---|---|
カルボニル化合物 | におい・殺菌作用・着色 |
フェノール類 | におい・殺菌作用・抗酸化作用 |
有機酸類 | におい・殺菌作用 |
アルコール類 | 少ない |
炭化水素類 | 少ない |
燻煙の成分は一定ではありません。
燻煙材の種類や燻し方によって、仕上がりの風味や色合いも変化します。これらのことからも、燻煙材の形状や樹種、隠し香(ザラメや茶葉など)を複雑に組み合わせることによって好みの燻製を作り上げていきます。
凝りだすと沼にハマりますので注意が必要です。
酸っぱくなる理由は?

燻製が酸っぱくなるのは有機酸が原因です。
有機酸とは酸性を示す有機化合物の総称です。燻製の表面に水分が多いと、ギ酸や酢酸などの分子量の小さな有機酸が溶け込んでしまうために酸っぱくなります。そのため、家庭用の鍋型スモーカーには注意が必要です。
鍋型スモーカーの多くは密閉性を売りにしています。
自宅キッチンでは燻煙が嫌われる傾向にありますので当然といえば当然です。しかし、「煙が逃げない」というメリットの反面、「水蒸気が充満しやすい」「燻煙材の火が消えやすい」などのデメリットもあります。
水蒸気が充満しやすい燻製器は燻製が酸っぱくなりがちです。
酸っぱくなるのを防ぐには?

燻製の酸味は水分管理で防げます。
燻製の基本的な作業には「①下ごしらえ→②塩漬け→③塩抜き→④乾燥→⑤燻煙→⑥熟成」という6つの工程があります。④⑤⑥は燻製表面の水分量に直接的な影響力を持ちますので注意が必要です。
以下は各工程の主な役割です。
燻製の手順 | 目的 |
---|---|
①下ごしらえ | 食材の掃除 |
②塩漬け | 味つけと腐敗防止 |
③塩抜き | 塩分の均一化 |
④乾燥 | 水分量を減らす |
⑤燻煙 | 熱燻・温燻・冷燻による |
⑥熟成 | 香りを落ち着かせる |
ここでのポイントは④⑤⑥です。
乾燥には風乾と温熱乾燥がありますが、いずれにしても手で触ってもべとつかないようになるまで乾かします。燻煙は密閉性の高いスモーカーの場合には途中で水分をふき取るようにします。熟成は風にあてつつ休ませます。
基本的には「酸味を取り除く=水分を取り除く」と考えてOKです。
【まとめ】燻製が酸っぱくなる仕組みは?
燻製が酸っぱくなるのは燻煙に含まれている有機酸が原因になっています。ギ酸や酢酸のような分子量の小さな有機酸は水に溶けやすいため、食材表面の水分に溶け込んで燻製を酸っぱくします。酸っぱくなるのを防ぐためには燻製表面の水分を減らすことです。また、酸っぱくなってしまった燻製であっても熟成の工程で長めに風に当てることによって揮発させることができます。