育った鉄フライパンとは? 使い続けることが育てることにつながる理由について

育った鉄フライパンとは?

鉄フライパンの育て方について説明します。

鉄フライパンは正しく使い続けることにより使いやすくなっていきます。この使いやすくなっていくことを“育つ”と表現されています。育った鉄フライパンは食材がくっつきにくくなるためにストレスフリーで使えるようになります。

また、シーズニングのように意図的に使いやすくする方法もあります。

鉄フライパンに食材がくっつく理由は?

鉄フライパンは摩擦係数が高いためにくっつきます。

鉄(圧延鋼)は摩擦係数の大きな素材であるために油を使って食材がくっつくことを防いで調理します。新しい鉄フライパンに食材がくっついてしまうのは、油切れを起こしやすいために摩擦係数が大きくなってしまうためです。

油切れを防ぐには油膜が利用されます。

ここでの油膜とは油が酸化することにより形成される樹脂層(ポリマー層)のことであり、強固な油膜が形成された鉄フライパンは油が少なくても(油膜切れを起こしにくくなるために)食材がくっつかなくなります。

油膜をフッ素樹脂(テフロンなど)の代わりにするということです。

使い続けることにより育っていく理由は?

鉄フライパンは使い続けることにより育ちます。

鉄フライパンを使いやすくする油膜(樹脂層)の正体は劣化した油です。油は「空気に触れる」「加熱する」「金属に触れる」などにより急激に劣化しますので、鉄フライパンには酸化重合した油が油膜となって蓄積していくことになります。

洗剤を使わずに洗うのは、薄く残った油を劣化(酸化重合)させるためです。

意外かもしれませんが、鉄フライパンの油膜は保管時(使っていない時間)に強固なものへと変化していきます。油絵具(乾性油)が空気に触れさせておくことで硬化するように、フライパンに残った油も時間経過により固まっていきます。

油の種類にもよりますが、油膜は硬化することで剝がれにくくなります。

意図的に短期間で使いやすくするには?

油膜は意図的に作ることもできます。

鉄フライパンは使い続けることにより使いやすくなっていきます。しかし、油膜の形成には時間がかかりますので意図的に油を酸化(酸化重合)させて油膜を形成させることもあります。この作業をシーズニングと呼びます。

シーズニングは油の選び方がカギを握ります。

油には酸化により固化するものとしないものがあり、ヨウ素価(C=C二重結合の多さを示す指標)の違いにより乾性油(ヨウ素価130以上)、半乾性油(ヨウ素価100~130)、不乾性油(ヨウ素価100以下)に分けられます。

シーズニングに用いられるのは乾性油です。

特徴種類
乾性油亜麻仁油、胡桃油、向日葵油など
半乾性油コーン油、胡麻油、大豆油など
不乾性油オリーブ油、椿油、菜種油など

人気があるのはグレープシードオイルです。

グレープシードオイルのヨウ素価は124~143程度であり乾性油に分類されます。「ヨウ素価の高い亜麻仁油(168~190程度)の方が良いのでは?」と思われるかもしれませんが、硬すぎる油膜は仕上がりこそ良いのですが衝撃に弱くなります。

このことからもグレープシードオイルが人気になっています。

MEMO
鉄フライパンやスキレットに油膜を作る(シーズニングする)場合、個人的にはひまわり油(ハイリノール)が使いやすいと感じています。

鉄フライパンが使いにくくなる理由は?

鉄フライパンは一度育っても使いにくくなることがあります。

使いにくくなる原因は油膜剥がれです。鉄フライパンに形成される油膜の正体は、油が酸化重合することによる樹脂層です。樹脂層といえば聞こえは良いのですが、いわば“頑固な油汚れ”ですので使い方によっては剥がれてしまうことがあります。

たとえば、煮込み料理やトマト料理などです。

煮込み料理は約100℃の水分で長時間煮込むわけですので油汚れである油膜は剝がれてしまいます。また、トマトは酸の強い食材です。油膜は酸性ですのでトマトの酸には分解されませんが酸は鉄を溶かしますので油膜は根元から剝がされることになります。

これらの理由により、鉄フライパンは煮込み料理とトマト料理が苦手です。

【まとめ】育った鉄フライパンとは?

鉄フライパンが育つというのは、フライパンの表面に油が酸化重合したことによる樹脂層(ポリマー層)が形成されることです。油を酸化させるためには「油を薄く塗って加熱する」のが効果的ですので、使用後の鉄フライパンは洗剤を使わずに洗って薄い油の層を残しておくことがポイントになります。シーズニングのように意図的に油膜を形成させる方法もあります。その場合の油は乾性油を選ぶことがポイントであり、ヨウ素価の高すぎない(硬化しすぎない)乾性油であるグレープシードオイルが人気です。

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