ぬか床は膨らむことがあります。
ぬか床が膨らむのは、微生物が炭酸ガス(二酸化炭素)を生成しているためです。炭酸ガスを生成する微生物といえば酵母菌と一部の乳酸菌(タイプ1のヘテロ型乳酸菌)ですが、多くは酵母菌によるものだと考えられています。
また、酵母菌にも炭酸ガスを生成しやすいものとアルコールを生成しやすいものがあります。
ぬか床が膨らむ仕組みは?
ぬか床は、微生物の生成する炭酸ガスにより膨らみます。
発酵パンをイースト(酵母菌)により膨らませているのと同じ仕組みです。基本的に酵母菌はアルコールと炭酸ガスを生成する微生物ですが、酵母菌の種類によってはアルコールを生成しやすい菌や炭酸ガスを生成しやすい菌などのように特徴が異なります。
アルコールを生成しやすい菌が酒造りに利用され、炭酸ガスを生成しやすい菌がパン作りに利用されているわけです。
しかし、乳酸菌による可能性も否定はできません。
乳酸菌とは主に乳酸を生成する微生物の総称ですが、乳酸菌にはホモ型乳酸発酵をする菌とヘテロ型乳酸発酵をする菌があります。ホモ型乳酸発酵は乳酸を生成し、ヘテロ型乳酸菌は乳酸の他にアルコールや二酸化炭素、酢酸なども生成します。
- ホモ型乳酸発酵:乳酸
- ヘテロ型乳酸発酵
- タイプ1:乳酸+エタノール+二酸化炭素
- タイプ2:乳酸+酢酸
微生物の種類によっては、膨らみやすいぬか床もあれば膨らみにくいぬか床もあります。
膨らむぬか床のデメリットは?
膨らむぬか床は、ぬか漬けの食味を落とします。
過度に膨らむぬか床は気相が増えるために漬かりが悪くなります。そして、炭酸ガスが水素イオン指数(pH)を下げることにより酸っぱくなります。また、炭酸ガスが溶け込むことによりピリピリとした食感になることもあります。
炭酸ガスを多く含んだぬか漬けは、お世辞にも美味しいものではありません。
酵母菌の働きを抑制するには?
基本的には温度を下げて対応します。
酵母菌は空気のある環境では増殖し、空気のない環境ではアルコール発酵をする微生物です。足しぬかをしてぬか床の空気層を増やせば炭酸ガスの生成を抑制できますが、空気に触れることにより酵母菌自体の数を増やしてしまうことになります。
また、水分量を変化させると酵母菌以上に生育スピードの早い乳酸菌への影響力が大きくなります(※乳酸菌は空気のない環境で増えつつ乳酸菌を生成し、空気のある環境では減少してしまう微生物です)。
これらのことからも、温度を下げて(冷蔵庫管理に切り替えて)微生物全体の生育スピードを鈍らせるのが最も安全な対処方法となります。
【まとめ】ぬか床が膨らむ理由は?
ぬか床は微生物の生成する炭酸ガス(二酸化炭素)により膨らむことがあります。発酵パンがイースト(酵母)の生成する炭酸ガスにより膨らむのと同じ仕組みです。炭酸ガスを生成する微生物には酵母菌とタイプ1のヘテロ型乳酸菌があります。ぬか床に生育する微生物は管理している人や場所によって異なる特徴を有していますので、同じレシピであっても膨らみやすいぬか床があれば膨らみにくいぬか床もあります。あまりにも膨らんでしまう場合には温度を下げて(冷蔵庫管理に切り替えて)対処するのが現実的です。
素晴らしいです。ありがとうございました。