米は30~120分ほど水につけます。
米の主成分はでんぷんです。米を炊くという操作は「米のでんぷんを糊化(α化)させて消化吸収をよくする」ことですので、米は十分に吸水させてから加熱しなければいけません。吸水が不十分であると生のでんぷんが残ってしまうことになります。
そのため、「最低でも30分、できれば2時間」ほどは水につけておくことが推奨されています。(※近年の炊飯器は浸水なしでも問題なく炊けますが浸水させた方がおいしく炊けます)
米を水につける目的は?

米のでんぷんは糊化(α化)により食べられるようになります。
生米のでんぷんはブドウ糖の分子が鎖のようにつながって結晶粒を形成しています。そのままでは消化吸収が悪く食味も良くありませんが、水のある状態で加熱することによりブドウ糖の分子が緩んで消化吸収が良くなります。
そのため、米は十分に吸水させてから加熱する必要があります。
ちなみに、冷や飯の食感が悪くなるのはでんぷんの老化(β化)が原因になっています。でんぷんは十分な水分と熱により糊化して消化が良くなりますが、そのまま放っておくとでんぷんの老化が起こることにより消化が悪くなります。
冷蔵庫のご飯がおいしくなくなるのは、でんぷんが老化するためです。
最低30分できれば2時間の理由は?

炊飯には「最低でも30分、できれば2時間」の浸水時間が必要です。
精白米(胚乳)はでんぷんの貯蔵細胞です。米の細胞にはぎっしりとでんぷんが詰まっていますので、中心部まで細胞を膨潤させてから炊き始めなければ芯の残ったご飯(にわかだきごはん)になってしまいます。
そのために必要な時間が「最低でも30分、できれば2時間」といわれています。
米の飽和吸水量は20~25%です。米を水につけると(洗米をはじめると)最初の15~30分の間に急激に吸水が進みます。その後は緩やかな上昇カーブをたどり、2時間ほどで飽和吸水量に達するような形になります。
後述しますが、水温を高くすることにより短時間で吸水させることも可能です。
一晩水につけたままでもOK?

米の浸水時間は2時間が理想です。
それ以下では吸水(細胞組織の膨潤)が不十分になってしまうリスクがありますし、それ以上では細胞組織が弱まり米粒が崩れやすくなることがあります。また、水温上昇に伴う腐敗現象のリスクも高まります。
しかし、一晩くらいであれば大きな問題にはなりません。
たとえば、前夜に洗米と水分調整を済ませて冷蔵庫で浸水させておけば、翌朝は炊飯器にセットしてスタートボタンを押すだけで理想的なご飯を炊くことができます。
調味料添加のタイミングは?

調味料は浸水後に加えます。
調味料の存在は、米の吸水時間や飽和吸水量に影響を与えます。味つけご飯(炊き込みご飯)には塩、醤油、料理酒などを加えますが、これらの調味料には米の吸水を妨げる作用があるために吸水後に加えるのがセオリーとなります。
しかし、2時間以上浸水できる場合にははじめから加えても大きな問題はありません。
米の吸水を妨げる調味料の影響力は、浸水時間30分前後で最も大きくなります。2時間ほど吸水させる場合には(多少の飽和吸水量の減少は確認できるものの)問題とするほどの大きな悪影響にはなりません。
このことからも、浸水時間が30分前後しか取れない場合には「調味料は浸水後に加える」ことを心がけることがポイントになります。
炊飯器のモードによる違いは?

炊飯器は浸水なしで炊くことができます。
本来、米は浸水後に炊き始めなければ芯の残った“にわかだきごはん”になります。しかし、近年の炊飯器は浸漬機能(水温を30~40℃まで上昇させて10~15分間保持した後に炊飯へ移る機能)が組み込まれていますので浸漬なしでも炊飯できます。
ちなみに、炊飯器の○○モードは「浸水、温度上昇期、沸騰期、蒸し煮期、蒸らし」などの時間配分の違いです。
たとえば、早炊きモードは浸水と蒸らしの時間を短縮することにより全体の時間を短くしていますし、玄米モードは浸水の時間を延長することにより90~120分ほどかけて玄米がふっくら炊き上がるようにコントロールされています。
これらのことからも、炊飯器で炊く場合には浸水時間が多少アバウトになってしまっても(鍋で炊くときほどの)違いは生じにくくなっています。
【まとめ】米を水につける時間は?
米の浸水時間は「最低でも30分、できれば2時間」がおすすめです。2時間も待てない場合には前夜に米を研いで冷蔵庫で浸水させておいてもOKです。味つけご飯にする場合、浸水時間を長くとれない(30分前後で浸水させる)場合には浸水後に調味料を加えることで調味料による吸水率の低下を防ぐことができます。また、近年の炊飯器にはあらかじめ“吸水時間”が設けられていますので、吸水なしでも問題なく(にわかだきごはんになることなく)炊けるようになっています。