ぬか床に米麹を加える効果は?

この記事は約 5 分で読めます。

こんにちは、めしラボです。

ぬか床を管理していると「発酵が弱まってくる」「うま味が少ない」「嫌な臭いがする」などの問題が生じてしまうことがありますが、これらの問題は麹(米麹や塩麹、麹甘酒など)を加えることにより解決できる可能性があります。

米麹に含まれている酵素はぬか床内でも効果的に作用します。

めしラボめしラボ

今回の記事は次のような人におすすめ!

  • ぬか床の発酵が弱まって美味しく漬からなくなってきた。
  • ぬか漬けのうま味が足りない気がする。
  • ぬか床から不快な臭いがするようになってきた。

米麹に含まれる酵素には多くの効果があります。

ぬか床に米麹を加えることにより「ぬか床の発酵が促される」「ぬか床のうま味が強くなる」「不快な臭いがなくなる」などの効果が得られます。これは米麹に含まれている酵素(アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼなど)によるものです。

酵素が働くことによりぬか床の味を良くします。

スポンサーリンク

米麹の働きとは?

米麹には豊富な酵素が含まれている。

酵素は「化学反応に対して触媒として機能するタンパク質」ですが、米麹にはアミラーゼをはじめとした多くの酵素が含まれています。酵素は麹菌が死滅しても失活することなく作用しますので、ぬか床に加えられても問題なく作用します。

その中でもぬか床に対して大きな影響力を持つのがアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、エステラーゼなどになります。

アミラーゼの働きは?

アミラーゼはぬか床内に糖を増やします。

米ぬかの約半分は炭水化物ですので、アミラーゼ(グルコアミラーゼ)が豊富に含まれている米麹を加えると、デンプンがグルコース(ブドウ糖)に分解されて甘味が増します。麹甘酒が甘くなるのも酵素(アミラーゼ)の働きによるものです。

グルコースは乳酸菌や酵母などのエサになります。

ぬか床内の主要な微生物である乳酸菌や酵母などは、グルコースを消費することによって増殖して様々な成分を生成しています。ぬか漬けに付与されるさわやかな酸味や豊かな香味は、乳酸菌や酵母が働いた結果生み出されるものです。

このことからも米麹は発酵促進剤のように用いられることがあります。

プロテアーゼの働きは?

プロテアーゼはぬか床内にアミノ酸を増やします。

米ぬかには15%ほど(アミノ酸組成によるタンパク質は10.7%ほど)のタンパク質が含まれています。米麹に含まれている酵素(プロテアーゼ)にはタンパク質を分解してアミノ酸にする働きがありますので、グルタミン酸などが増えることでうま味が強くなります。

またプロテアーゼには「タンパク質の可溶化」「ペプチドの生成」「遊離アミノ酸の生成」などの働きもありので、ぬか漬けのうま味が足りないと悩んでいる場合にはもってこいの食材であるといえます。

米ぬかに含まれているタンパク質を利用しない手はありません。

ここに注意!

うま味物質として知られているものには、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸などがあり、米ぬか由来のうま味はグルタミン酸になります。うま味を強くするためには他のうま味成分を組み合わせる「うま味の相乗効果」が効果的ですが、イノシン酸のもとになる動物性タンパク質はぬか床を腐らせる(pHが上昇する)恐れがあるため、相乗効果を利用する場合には干しシイタケなどのグアニル酸と組み合わせるのがおすすめです。

リパーゼやエステラーゼの働きは?

リパーゼやエステラーゼは不快な臭いを発する成分を分解します。

ぬか床内には、生育している微生物により多種多様な香気成分(酸、アルコール、エステル、フェノール化合物、ラクトン類など)が生成されています。これらの生成物の多くはぬか漬けを美味しくするために役立ちますが、悪臭の原因になっているものもあります。

そこで役立つのが米麹に含まれている酵素です。

米麹にはリパーゼ(脂質を分解する酵素)やエステラーゼ(エステルを酸とアルコールに分解する酵素)などが含まれている他、悪臭を放つ酸(プロピオン酸や酪酸など)を分解する微生物を活性化させてくれる効果もあります。

これらの作用によりぬか床に生じる不快な臭い(脂質や有機酸に起因する不快な臭い)を和らげることにつながります。

米麹のデメリットは?

米麹を加えることで美味しくなくなることもあります。

米麹に含まれているリパーゼやエステラーゼには「不快なにおい成分を分解する」といった働きがありますが、これらの酵素は「好ましいにおい成分まで分解してしまう」ことがあります。よく言えば「澄んだ味」、悪く言えば「物足りない味」になってしまうリスクがあるということです。

またにおいに関わる成分はとても複雑です。

有機酸の多くはそれ単体では不快な臭気成分ですが、アルコールとエステル化することにより華やかな香気成分になることもあります。また微量であれば果実臭などの香気として認識される成分であっても、多量になるとシンナー臭やセメダイン臭といった臭気と認識されることもあります。

好みの問題もありますが、現在のぬか床の味に満足している場合には注意が必要です。

まとめ・ぬか床に米麹を加える効果は?

米麹には豊富な酵素が含まれています。

米麹をぬか床に加えることで「糖が増えて発酵が促される」「アミノ酸が増えてうま味が増す」「脂質や有機酸に起因する不快な臭いが和らぐ」などの効果が得られます。これこそが米麹に含まれている酵素(アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼなど)の働きです。

手軽で効果的であることからも広く親しまれているテクニックのひとつです。

※ぬか床容器は価格変動が大きいため注意してください。常温管理には米ぬかをこぼしにくい寸胴型容器、冷蔵庫管理にはデッドスペースのできにくい角型容器がおすすめです。