鉄フライパンを使い始めるには? 最初のシーズニングについて

鉄フライパンを使い始めるには?

鉄フライパンを使い始めるには、塗装を除去してから皮膜を形成します。

新しい鉄フライパンには、サビ止めの塗装(保護被膜)が施されています。保護被膜の種類には各メーカーにより異なるものが採用されていますので、基本的には取扱説明書の指示に従うことをお勧めします。

また、この種類の違いにより後の処理方法も変わってきます。

使い始める前にやるべきことは?

使い始める前にやるべきことは?

鉄フライパンを使い始めるには、ひと手間かかります。

基本的には、「①保護被膜の除去→②酸化被膜の形成→③油膜の形成」の順に作業していくことになります。しかし、必ずしも同じ作業になるとは限りません。保護被膜や材質の違いによって処理方法は変化することになります。

まずは、保護被膜を処理していきます。

保護被膜処理方法
アクリル塗装焼き切る
シリコン塗装なにもしない
ビーワックスお湯で落とす

基本的には、取扱説明書の指示に従います。

次に、酸化被膜(黒さび)を形成させます。黒さび(Fe3O4)は安定した性質を有しているため腐食を進行させてしまう赤さび(Fe2O3)を防ぎます。(※シリコン塗装の場合は不要です)

表面の状態酸化被膜
銀色青みがかった灰色になるまで熱する
黒色
(黒皮鋼板)
熱する必要はない

酸化被膜の形成は、必ずしも必要な作業ではありません。

酸化被膜には鉄をサビにくくする効果がありますが、酸化被膜の形成には585℃という高温に熱する必要がありますので、一般家庭の台所では難しい面があります。また、黒皮鋼板の黒色は酸化被膜の一種ですので、そのままで大丈夫です。

最後に、油膜を作っていきます。

油膜(ポリマー層)には油なじみを良くして摩擦係数を減らす効果があります。油膜の正体は劣化した油による樹脂層ですので、鉄フライパンの表面に油を酸化重合させることにより形成させていきます。

油膜の形成のことは、シーズニング(慣らし)と呼ばれたりもします。

サビ止め塗装の除去方法は?

サビ止め塗装の除去方法は?

サビ止め塗装を落としていきます。

一般的な保護被膜(アクリル塗装)は煙が出なくなるまで空焼きすることにより焼き切りますが、遠藤商事の業務用鉄フライパン(スタンダードタイプ)に施されているシリコン塗装は焼き切ることができません。

そのため、紙やすりやワイヤーブラシを使って削り落としていきます。(※本来、シリコン塗装は除去せずに使い始めることのできる保護被膜ですが、使用感の違いが気になることからも私は除去してから使い始めています)

STEP.1
削り落とします。
削り落とします。

鉄フライパンの内側を紙やすりやワイヤーブラシで削っていきます。作業工程としてはサビた鉄フライパンのリセット方法と同じですので、紙やすりの番手は「#60→#120→#240」としました。リベットの部分などにはワイヤーブラシがあると便利です。塗装の除去具合は、光を当ててると目視にて確認できます。(※シリコン塗装は、から焼きしてから金たわしでこすっても落とせます

STEP.2
クレンザーで磨きます。
クレンザーで磨きます。

クレンザーで磨いていきます。クレンザーは“研磨剤入りの洗剤”ですので、クレンザーを使って磨くことにより鉄フライパンの表面がなめらかになります。ちなみに、粉末タイプとクリームタイプでは粉末タイプの方が研磨剤の粒子が大きくなります。

STEP.3
空焼きして水分を飛ばします。
空焼きして水分を飛ばします。

念入りにすすいでから水気を拭き取り、空焼きすることで完全に水分を飛ばします。

繰り返しになりますが、この工程は保護被膜の種類によりやり方が変わります。

多くの鉄フライパンは“アクリル塗装“であるために煙が出なくなるまで焼き切ることで除去していきますが、遠藤商事の業務用鉄フライパンに施されているシリコン塗装は本来であれば除去せずに使い始めることのできる保護被膜です。

一般的な作業とは異なっていることはご了承ください。

黒さび(酸化被膜)を作るには?

黒さび(酸化被膜)を作るには?

酸化被膜を形成させます。

まずは、鉄フライパンの色を確認します。酸化被膜(黒さび)の形成には585℃まで熱する必要がありますが、黒皮鋼板の黒色は製造工程で形成された酸化被膜の一種ですので、表面が黒い場合はこの工程は必要ありません。

しかし、銀色をしている場合には酸化被膜を形成させることによりサビにくくなります。

STEP.1
Siセンサーのないコンロで空焼きします。
Siセンサーのないコンロで空焼きします。

Siセンサーの付いていないガスコンロ、カセットコンロ、ガストーチなどを使って空焼きをしていきます。酸化被膜の形成には高温(585℃)に熱する必要がありますが、Siセンサーの付いているガスコンロでは温度を上げることができません。

STEP.2
青みがかった黒灰色になるまで熱します。
青みがかった黒灰色になるまで熱します。

585℃まで熱していきます。585℃というのは鉄が鈍く光りはじめる(高温発光し始める)くらいの温度となりますので、事故や火傷などには十分に注意しながら作業します。フライパンの表面が青灰色になるまで熱すればOKです。

この作業は必ずしも必要ではありません。

一般家庭の台所で鉄を585℃まで熱するのは現実的ではありませんし、加熱方法によっては温度差によりフライパンが歪んでしまうこともあります。完璧を目指すのではなく、「黒灰色になればOK」くらいの気持ちで大丈夫です。

黒さび(四酸化三鉄)の形成が不十分であっても使用上の問題になることはありません。

油膜(ポリマー層)を作るには?

油膜(ポリマー層)を作るには?

最後に、油膜を作っていきます。

油膜の形成にはいくつかの方法があります。たとえば、「野菜くずを炒める」「油を薄く塗ってから加熱することで焼きつける」「油を薄く塗ってオーブンで焼きつける」などの方法が一般的ですが、その他にも「少量の油を熱して冷ますを繰り返す」などの方法もあります。

ここでは、薄く塗って焼き付ける方法を実践していきます。

STEP.1
鉄フライパンを熱してから油を塗ります。
鉄フライパンを熱してから油を塗ります。

鉄フライパンを熱します。鉄の表面には目には見えない“吸着水”と呼ばれる水分が付着していますので、吸着水を飛ばしてから油を塗ることにより鉄と油のなじみが良くなります。油は乾性油(亜麻仁油や胡桃油など)を使うのが理想的です。他の油でもできなくはありませんが、べたついたり剝がれやすかったりします。

STEP.2
発煙点まで熱して焼き付けます。
発煙点まで熱して焼き付けます。

十分に熱して煙を出します。油膜の正体は頑固な油汚れ(酸化重合化した油)ですので、油を酸化させることがポイントになります。油は酸化することにより色が濃くなる(茶色になる)性質がありますので、酸化の程度は目視にて確認できます。十分に熱したら濡れ布巾などにあてて(濡らした布巾の上において)温度を下げます。再び油を薄く塗って加熱する(もしくはそのまま加熱する)ことを繰り返すことにより油膜を強固なものにしていきます。十分な油膜が形成されればOKです。

可能であれば乾性油を使ってください。

一般的なサラダ油(菜種油など)でもできなくはありませんが、半乾性油(コーン油やごま油など)や不乾性油(オリーブ油や菜種油など)は固化しませんので、油膜が「はがれやすい」「べたつく」などの問題が生じやすくなります。

少し高価な油ですが、薄く塗るだけですのであれば使ってください。

鉄フライパン使い始めの変化

以下は、各工程での画像です。

新品
新品
保護被膜の除去
保護被膜の除去
研磨剤後
研磨剤後
酸化被膜の色
酸化被膜の色
酸化被膜の形成
酸化被膜の形成
油膜の形成
油膜の形成

少しでも参考になれば幸いです。

【まとめ】鉄フライパンを使い始めるには?

鉄フライパンは、使い始めにひと手間(①保護被膜の除去→②酸化被膜の形成→③油膜の形成)かかります。しかし、すべての鉄フライパンに同じ作業が必要なわけではなく、保護被膜の種類や鉄の種類などにより異なります。このことからも、基本的には取扱説明書の指示に従うことをお勧めします。

コメントを残す